「兄弟よ。お前達は自然を慈しんだことはあるか?」
床に這いつくばるユンテスの顎をしなやかな指が掴む。
「地は泣いている。」
エメラルドグリーンの慈愛に充ちた輝くような瞳は、ほかの兄弟達には無いものだった。
圧倒するような力はヨウテスの親にも匹敵する。いや、既に超えているかもしれない。
「泣いている…だと」
その言葉に、姉であるシスティスは薄く笑った。
「そんな事もわからないのか。こんな命を破壊するような魔法は地に相応しくないと言っているのだ。」
ユンテスは嘲笑うかのように言う。
「ハッ…綺麗事だな。姉上のあまっちょろい理想は身を滅ぼす。」
「逆だ、そんな魔法では誇りある幻人族の尊厳に関わる。
実際、同じ族であるお前達はこの程度の私の重圧に根も葉もたたないではないか。」
そう言うと、ユンテスは大人しくなった。
「ヨウテス…私のせいで苦労をかけたな。
もう、大丈夫だ。」
その言葉に、ヨウテスは顔を歪めて涙を流した。
「父上、私が次期幻人族の後継者となります。」
その言葉に、誰もが驚いた。
「貴様…ふざけ「ふざけてなどいない。私はお前達には任せられないと言っておろうが。」
ユンテスは悔しそうに唇を噛んだ。それとは対照的にヨウテスはスッキリした表情をしている。
「本当に…いいのか?」
「何を言っているのですか。
私は貴方の娘ですよ?」
その言葉に、両親は頬を緩めた。
「次期族長は、我が娘。
システィス・クラビアンとする。」
その場の空気は一気に軽くなった。
システィスの重圧は解けて、リオは立ち上がる。
「まさか、システィス様が出てくるとは思わなかったよ。」
苦笑いを浮かべて、ビアンカを起き上がらせると、そこから飛び降りた。
「ヨウテスっ!」
クロエやビアンカも続いて飛び降りる。

