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「ねぇ、まさか居座るつもりじゃないでしょうね。」
ビアンカの部屋のソファーに寝転ぶヨウテスと、小さいテーブルの横に座るリオ。
ふたりともシャワーを浴びていて、ビアンカも浴び終えていた。
リオの肩までの栗色ストレートの髪を、
水が滴る。
黒髪に近い紫色の髪を、弄ぶヨウテスに顔を顰めた。
「食べないんだったら、ひとりで食べるわよ。」
そうは言ったものの、目の前に大量に並ぶ料理はとても食べ切れそうにない。
それがわかってかなんなのか、リオはクスッと笑って食べ始めた。
「美味しいね!」
自分より可愛らしく笑う姿を見て、私は女としてどうなのかと思い始めるビアンカ。
ヨウテスも食事に手を伸ばした。
「本当だ」
「…失礼ね」
ついつい出てしまう減らず口に、溜息をつきそうになる彼女。
その後は、すごい勢いで食べ始めるふたり。
男の子はこんなにも食べるのだろうかと唖然としながら見ていた。
気付けば料理はすっかりなくなっていて、満足そうに微笑む二人を見て慌てて食器を片付ける。
寝だしたヨウテスにタオルケットを掛けている様子を飽きずにずっとみているリオに、首を傾げた。
「なによ」
「……ビアンカ、俺を覚えてない?」
虚しく部屋に響く声。
ビアンカは首を振った。
「でも、貴方をみていると何か不思議な感じがするわ。」
そう言うと、悲しそうに笑った。
「ヨウテス、連れて帰るね。」
「いいわ、ここにいても。」
服の裾を掴んで止めるように言うビアンカに驚く。
リオは何を思ったのか嬉しそうに笑ってその場に座った。
ビアンカも、ソファーの上に丸まって眠り出す。
リオは、そんな寝顔を見て愛しそうに頬をなでた。
「本当は男を引き止めたらだめだって言わなきゃならないんだけどな…君の前だとそんな余裕ないや。」
腰と足の関節に腕を通すと軽く持ち上げ、ベッドに下ろす。
ーチュッ
そして軽いリップ音が部屋に響いた。
「これくらいは…許してね。」
まるで壊れ物を触るように、彼女の髪を撫でる。
「おやすみ」
暗くなった部屋の外には綺麗な月が浮かんでいた。

