「おい、お前」
会議が終わり、皆各自部屋へ戻ったり会議室で寛いでいたり任務をしたりと様々なことを行う。
そんな中、廊下はぴりぴりと空気が張り詰めていた。
「…なんだ」
シルバーの意思のある声と、
ゲーテの気だるげな声が響く。
「お前、ドラゴンの家系だろ。」
“ドラゴン”
火の部族に属する、非常に有力な純血の一族。
朱雀族の屋敷を見ての通り、代々朱雀族に使えてきた。
しかし、一夜にして姿を晦ましたとされている謎の多い一族だ。
「朱雀族に使えていたのなら、気安く信用出来ない。」
その言葉に、ゲーテは乾いた笑いを漏らした。
「クックックッ…
朱雀族?
知ったことじゃない。
俺は奴らが嫌いなんだ。
アキと言う女もその末裔なのだろ?
あの女は信用出来るが、それ以外の朱雀族はいけ好かねーな。」
心底嫌気がさすように、
ゲーテは眉間に皺を刻み込む。
シルバーはまだ信用出来ないのか、
ゲーテの首を鷲掴む。
「…クレアに何かしたら、
俺が許さねぇ。」
首を掴む手を払い除けようとだるそうに手を伸ばすが、シルバーはそれを阻止しようと壁に思い切りぶつけた。
「っ…てーな
あの女に惚れてんのか?」
シルバーは、一瞬瞳を揺らすが迷わず彼を見返した。
「あぁ」
その返答は予想外だったのか、
ゲーテは目を大きく開けた。
「フッ…心配ねーよ
ドラゴンは、一度決めた事は死んでも曲げねぇ質なんだ。
命に変えても守る。」
最後の言葉は、真剣な眼差しで言った。
シルバーは諦めたのか手を離す。
「その言葉、一生忘れるな。」
踵を返して消えていったシルバーにゲーテは深くため息をついた。
「手のかかる奴らだな…。」
“だが、面白い。”
楽しそうにふつふつと笑う。
その様子を、アキは隠れて見ていた。

