太陽と月の後継者


“ずるいでしょ?”

とビアンカがいうと、リオは首を振った。

「なにも、ずるくなんかないよ。
こんな表裏のある世界なんだ。

表は裏を知らないし、
裏は表を知らない。

時には表が裏を面白がってちょっかいを出すけど、全部馬鹿げてるって思うんだ。

風は喜びを運ぶ。

確かにそうかもしれない。
けど、同時に悲しみも運ぶ。

魔法がなかったら、
何か変わってたのかもね。



さっきの質問だけど、俺は迷わずビアンカを助けるよ。

世界でたったひとり。

ビアンカは誰を選ぶのかな?」

悲しそうに、けれど強く笑うリオ。

ビアンカは片目から涙を零した。

「ばかっ

なんで私なんか…」

「私“なんか”じゃない。

ビアンカ“だから”、俺は守るって決めたんだ。

ねぇ、守らせて。」

寂しそうに、何処か遠くの自分に語りかけているようだった。

ビアンカは、目を閉じる。

(思い出せない)

もっと、何かがある筈なのに。

ぽっかりと穴が空いている。

キルから助けてくれた時もそうだった。

でも、何かある。

それだけは確かだった。