「それじゃあ。
行くぞ。」
レイは何かを唱えると、
クロエ達の手を握る。
すると、ループのように素早く朱雀族の屋敷に着いていた。
六大貴族の屋敷は何処も城のようだ。
朱雀族の屋敷もそのひとつ。
屋敷の周りには、四つの柱があり、その上にドラゴンの像が4つ飾られていて、その口からは火が出ている。
真っ赤な燃えるような色の屋敷は、
結構悪趣味だ。
今までの六大貴族の屋敷は、人が多く住むところからは少し離れたところにあったが、朱雀族の屋敷は街中にドンと構えてある。
まるで争いはすぐに広まっていくことを表すように。
「ようこそ!入れよ。」
大きな柵で出来た門が開くと、
沢山の使用人達が並んでいて頭を下げていた。
『いつも、こんな感じなの?』
今までの屋敷ではこんなことは無かったが…。
「クレアが綺麗だって有名だから、
目にかかりたかったんじゃないか?」
レイは笑顔を絶やさず続ける。
「ほらほら、早く入れよ。」
リオやヨウテスは、何か得体の知れないものを感じたのか物静かだ。
ルカは、舐めまわすような視線をものともしていない。
『皆慣れてるのかな?』
「私たちは今まで沢山のことを学んだわ。
こういう出迎えもそのひとつよ。」
ビアンカは、うんざりするような口ぶりだ。
長い長い屋敷までの赤薔薇に囲まれた庭を歩き終えると、やっとのことで中に入った。
中も大層な豪勢さで、大きなシャンデリアに天井には何かの歴史のような絵が描かれている。
至るところにルビーが散りばめられ、
目がギラギラしてならなかった。
「こっちだ」
ポニーテールを楽しそうに揺らして歩くレイを慌てて追いかける。
ついていくと、食堂だった。
大きな長細いテーブルの上には
ろうそくが乗っていて、
人数分の食事が用意されている。
「今日は俺達だけ?」
首を傾げるリオに対して
レイは首を降った。
「もうすぐ父様が来る。」
怪訝そうにビアンカは言った。
「…聞いていないわ。」
「あの人は人を驚かすのが好きなんだ。
…嫌、だったか?」
『そんなことないよ。』
クロエが仲介に入っていると、
扉が勢い良く開いた。
「ようこそ我が屋敷へ!
我が名はレオンだ。
遠慮せず座ってくれたまえ。」
筋肉質な図体のでかい赤髪の男が入ってくる。
目の下には十字架の紋章が入っていた。
クロエははっとして、席から立ち上がる。
『っ!?』
「おや?どうかしたのか?クロエ。」
“クロエ”
確かに言った。
彼は言った。
クロエの本名を。
本名を知るのは、イズミしか居ないはずなのに。
「クロエ…?」
皆が、その言葉に反応する。
レイも少しの反応を示した。
「クロエって、あの神話の?
おじ様、どうかしてるわ。
彼女の名前はクレア・フルームよ。」
ビアンカは、慌てたようにそう言う。

