狂った人間達の声が頭に響くと同時に、
クロエは勢いよく身体を起こした。
『はぁ…はぁ……ぁぁぁあ』
クロエは、恐怖のあまりに自身の肩を抱いて身体を震わせる。
ーバンッ
勢い良く扉が開くと、シルバーとアリスがクロエの部屋へ入ってきた。
「どうしたっ!?」
「クレア…?」
どうも様子がおかしいので、入ってきたのだ。
『ぅぅあぁ…ぁあぁ…』
シルバーは、今にも消えてしまいそうなクロエを抱きしめる。
「悲鳴が聞こえたんだ。どうしたんだ?」
優しい声色で尋ねるシルバーは、
心底クロエを心配しているようだ。
クロエは、先程の夢の少女を思い出して更に肩を震わせた。
『私…私は……』
(夢の少女は天羽だった。)
そうに違いないとクロエは恐怖する。
嗚咽を漏らしながら大量の汗を吹き出すクロエをアリスは呆然と見ていた。
シルバーは、腕の力を強める。
そうしなければ消えそうなのだ。
この華奢な少女は。
『私に…似た……天羽を………
夢…で見た…。』
シルバーは目を見張る。
『その子は……形すら…残って……なかった。
ある のは……
恐怖と…
人の醜い欲に支配された
おぞましい化け物だけ……。』
シルバーとアリスは、
かつての天羽の残酷な死に方を知らなかった。
この小さな少女はどれだけの物を背負っているのだろう。
『私、あんな、酷い死に方を…しちゃうの!?
死にたく、ない!!
こわ……ぃ…よっ。
違う、…か。
私、死ねないんだった。
だから、
何度でも殺されかけるんだね。』
クロエは自嘲する。
かつての十字架の男が言ったように、
彼女は不死だ。
「お前は、俺が、俺達が守るから。
お願いだ。
消えないでくれ。」
今にも消えそうな彼女に、アリスも手を握る。
「アリス、守る。」
『…っ ありがと』

