太陽と月の後継者





『お…か……さ、お母様っ!!!』

むせ返るような血の匂い、

目の前で泣き叫ぶ少女。

真っ赤な血の海に落ちる

一筋の影。

また、この夢?

目の下に十字架が彫られている、ワインレッドの髪をポニーテールした奇妙な男。

この人は…誰かに似ている。

誰かがわからない。

『貴方が、お母様を……?』

「そうさ、可哀想な姫。
貴方様は天から落とされた神ノ子。
その美貌も力も、
すべてを世界のものが欲している。
世界の規律を乱すものは、
我らが抹消しなければならない。

だが、貴方様は不死身。
だから、貴方様には永久に眠って頂く」

『私は…
もう普通には暮らせないの…?』

「貴方様に一つだけ教えて
差し上げます。

貴方様は

“生まれてはならない者”

なのです。」

あぁ、そうだ。

何故忘れていたんだろう。

あの時彼は…

私を否定したんだ。











夢は、時を更に遡る。







「女を殺せ!!」

「心臓をっ…!」

夜の街に嫌な男や女の声がする。

そして沢山の金属音や足音が聞こえた。

クロエはある少女を見ていた。

魔法をしらないのか、白金色の髪を乱しながら裸足で必死に走っていた。

『ハァハァハァッ…ッア!!』

少女は石に躓き転んでしまった。

見ると、衣服や毛先も焼けている。


貴女は誰?


「いたぞー!!」

少女は、盗賊のような格好をした男達や欲に溺れた女達に囲まれる。

姿が見えなくなると、少女の悲鳴が上がった。

『いやぁあああ!!!』

その悲鳴も、一瞬で途絶える。

恐る恐る見ると少女は無残な姿となっていた。