「なので、半信半疑で聞いてください。」

「だったら剣を外さなくてもいいだろ。」

被せ気味で言ってくるあたり、少しの威嚇を感じる。

「ダメです。私が怖くて話せなくなります。」

それでも負けじと自分勝手なことを堂々と言う自分自身に笑いがでてくるが、これもまた事実。

本音をさらけ出して、当たって砕けてやる。

「ふっ..、分かった。これは外す。」

楽しそうに鼻で笑いながら承知してくれた男。
一瞬、空気が軽くなった。

そして剣の鞘が付いているベルトを外して壁に立てかけてくれた。

少し安心..。

「んで?剣は置いたが、俺があんたを無傷で生かしておく保証はどこにある。」

またまたピリつく空気。
そう。問題はまだあるのだ。

「それに関しては私も半信半疑でいることにします。」

どちらかといえば彼の方が信じられる気がするからだ。
見ず知らずの女を鎖にも繋げず、上等な部屋に寝かせ上質な格好までさせたんだからそんなに悪い方には疑われていないはず。

「それにあなた、さっきから私のやることや言うことを優先させてる。」

自分の気配に気づかなかった私に後ろから剣を向けることもできた。

それをしなかったということはきっと、最初から危害を加えるつもりはなかったんだと思う。
良く言えば紳士、悪く言えば女好きのたらしな雰囲気がする。

だって、正体の分からない変な奴にこんなもの着せないでしょ?

「私、死にたくないの。だからそのためにも全てをお話しします。」

言えた。
私が思っていることを目の前にいる男にさらけ出した。

あとはこの男次第。
息を潜めて答えを待つ。

「あんた、俺が何もしないって分かってて言ってるだろ。」

片口角を上げて意地悪く笑う男。

「うん。女好きであろうあなたにつけこんでる。」

それだったら私の格好を見て満足そうだったのも頷ける。

私は計算高い。
なにもしてこないのもわかってる。
だけど計算高いと言っても、私がやることは必ず成功するわけではない。

だから怖いのだ..。
なけなしの知恵を振り絞っても、失敗することを..。

しばらく沈黙が流れた後、男が口を開いた。

「はは、気に入った。」

「...っ!」

計算する女は嫌いじゃい。

なんて言ってくるあたり、やはり女好きのたらしであることを確信する。
そして私が計算していることをわかっているあたり、相当のキレ者。
敵に回したくないタイプの人間だ。

「話が長くなりそうだから、気を楽にしてベッドに座ってな」

と言われ、大人しくいうことを聞いた。

そして男は部屋の窓際に置いてあった高価そうなアンティーク調のイスをベッド横に置き、そこに座って話し始めた。