「っっ..ゴホゴホッゴホッゴホッ..!」

「もう大丈夫だ、今体を起こしてやる。ほら、深く息を吸え。」

「ゴホッゴホッ..。すーはーすーオホッオホッ!はぁ..はぁ..。」

先程感じた開放感のおかげなのか、息が出来ないほどの苦しさが無くなり、今度は苦しいながらも息が出来るようになった。

「ゆっくり目を開けてみろ。」

その声に従うように目を開けた。

「俺が見えるか?」

周りがガヤガヤと騒がしい中、あー..これが、時が止まったみたいだと感じることなのね。

状況が理解できない頭で冷静に思った言葉だった。

目の前には見たこともないくらいに整った顔の男の人がいた。
ずっと聞こえていたあの声の主みたいだ。

「..い。おい!」

「は、はい!」

「痛いとこは。」

これは..聞かれているのだろうか?
疑問符が付いていないようにも聞こえるのだが..。

「おい!」

「せ!背中が痛い..です..。」

いきなり大声を出してくるもんだからなんて答えていいのか分からず、声が裏返ってしまった。

そんな私を気にもしない目の前の男は、

「やっぱ邪魔だな、その服。」

などと言いながら、地面に座っている私の背後に回った。

そういえばここはどこだろう。
よく見たら私ずぶ濡れだ。
しかもよく見たら着物姿なんだけど..。

「え、着物?!....ぷはっ。え?!」

戸惑いとともに体の圧迫感が一気に消えた。