『ちょっと…それはないでしょ?』
そんな俺らを見て呆れ気味の村瀬。
だって、1曲目に披露するヒツゼンはまだしも、
新曲の初恋は明日お披露目って決まってるんだ。
なのに村瀬に聞かせるなんて。
しかも録音させてほしいって。
無理だ。
「ごめん…それはちょっと無理だ」
俺が代表で答える。
『あたしの妹ってさ、入院してなかったらこの学校に入学してたんだ。
でね、このバンドの曲を楽しみにしてた。
だけど入院してるから聞くことできないじゃん?
だから、聞かせてあげたいんだ?
それでも…ダメ??』
村瀬が申し訳なさそうな顔で聞いてくる。
「ユウちゃんのためってことか」
弘斗が呟く。
「村瀬の妹って入院してたのか?」
俊が渋い顔でドラムを触る。
『まあ…ね。』
「決まりだな。
おい、準備しろよ、みんな」
俺は肩からギターをさげた。
そんなこと言われちゃ、仕方ない。
村瀬の妹のために、俺たちは歌う。


