「春樹、智樹。
パンしかないけどいいか??」
「うん、いいよ」
ニコッと笑う春樹。
春樹の笑顔を見る度に、俺は癒される。
「なんでもいいよ」
智樹はそっけなく答えて洗面所のほうへ行ってしまった。
そのそっけなさも智樹のいいところなんだ。
賞味期限ギリギリの食パンを焼いて机の上に並べる。
そしてジュースを注ぎ、テレビのリモコンスイッチオン。
「兄ちゃん、今日ぞうきんいるんだ。」
食パンを頬張りながら春樹が言う。
そうだった。
俺は自分の部屋に戻って、
昨日古いタオルを縫って作ったぞうきんをひったくる。
「はい、これ。」
1枚ずつ2人に渡す。
今日から新学期が始まるんだ。
「「ありがと、兄ちゃん」」
言い方は丸きり違うが、双子の2人の声はハモった。
俺とはまったく違う顔のつくりの2人。
なぜかって……??
だって、俺と春樹たち2人とは親父が違うから。
俺の親父は俺が小さい頃に死んだ。
春樹と智樹は親父が誰か分からない。
母さんがどこかでつくってきた。
そして1人で産んだ。
で、今の生活。
親父がいなくて、母親は夜の仕事。
俺が2人の面倒を見てやらなきゃいけないんだ。


