「智樹…1つ聞いていいか??」
背中にギターの音を感じながら便箋に向かうが文章が浮かばなかった。
「ん?なに??」
智樹は練習していた手を止めて俺を見つめる。
「お前が初めて逢った人と話すときって何を最初に言う??」
そんなの簡単じゃん、と言った智樹は
「自己紹介。
自分の名前とか、好きなこととかさ…」
それだけ言ってまたギターの練習を始めた。
そうか。
それだけか。
自分のこと、書けばいいんだよな。
バカじゃん、俺。
そのあと、智樹のおかげで俺の手はスムーズに動いた。
智樹の練習もスムーズに進んだみたいで、だいぶ上達していた。
封筒に入れて俺は家を出る。
切手はうちにない。
そんなのいつも必要ないから。
だから、病院まで走った。


