『ふふふ』

俯いていた村瀬がいきなり笑い出した。


「なんだよ?」

俺は少し、不機嫌になる。

せっかく心配してやったのに…


『木村って意外に熱いヤツなんだね。

いつも冷めてるから…


ありがとね、木村!!

それじゃあまた明日!』

最後に俺にとびっきりの笑顔を見せた村瀬は

元気良く病院へ向かって自転車をこいで行った。



「兄ちゃん、あの人…誰??」

突然、後ろから声をかけられ体がビクッとした。


「なんだ、智樹かよ。」

俺の後ろにいたのは智樹だった。



「あの人、兄ちゃんの彼女??」



「バカ言うな!

それより、春樹はどうした??」

俺は軽く智樹を小突き、家の鍵をあける。


「アイツは友達とサッカーしてる」



「お前もサッカーしてくればよかったじゃん」

と、俺が言うと


「俺、サッカーよりギターがやりたいんだ。」

智樹が俺を見つめる。


俺は何も言えなかった。


ただ、智樹を抱きしめた。

嬉しかったんだ。


「兄ちゃんみたいになりたい」

そう智樹が言ってくれたことが。