「そう言えば、村瀬って家こっちなの??」
今日もまた、なぜか村瀬と帰ってる俺。
まあキライではないからいいんだけど…
『いや?違う。
知り合いが木村の家の前の病院に入院してるんだ。
だからお見舞いで。』
少しだけ寂しそうな村瀬の表情。
きっと、村瀬の大切な人が入院してるんだ。
「その知り合いの人…どんな病気なんだ??」
俺がこんなことを知ってどうかなるワケじゃない。
でも気づいたら口が勝手に動いていた。
『癌。しかも末期の。
もう治らないかもしれないんだって…』
村瀬の顔が俯いていく。
俺は自転車を止めた。
『ん?どうしたの??』
村瀬も自転車を止める。
「”かも”ってことは、治る可能性あるんだろ?!
どうしてそんな悲しそうな顔するんだよ!」
何を俺はムキになっているんだろう。
やっぱり俺はおかしくなったのか?
「その人、お前にとって大切な人なんだろ?
だったら笑えよ。
今からその人にお前の元気、分けて来いよ。
お前も辛いかもしんねぇーけど、
お前より本人のほうがもっと辛いはずだろ?
その人がお前のそんな顔見たら、よけい辛い。
だから笑って逢ってこいよ。」
俺は村瀬の頭に手を置いた。
何…してんだ、俺。


