「悠香…悠香は…」


俺はベットに駆け寄る。

村瀬は俯いたまま首を横に振る



「村瀬、顔…上げろよ

悠香…いるだろ?
悠香、ここにいるだろ?

なのにどうして俯いてるんだよ?」


そんなワケないんだ

悠香はいるじゃないか


ここに、いるじゃないか


こうしていつものように手を握れば温もり…が…



「……………っ」


悠香の手は凍ったように冷たくなっていた。



「おい、悠香?

悠香!起きろよ!
起きろ!悠香!

まだデートだって何もしてないだろ?!

悠香!なんで寝てるんだよ?!
ほら、起きろよ!

もう朝だぞ、悠…『木村!』


顔にかけられた白い布を取り去り
悠香の肩を揺する俺の腕を村瀬が掴んだ。


でも俺はその腕を振り払う。



「悠香!起きろよ…!

起きて、俺に笑いかけてくれよ!

なぁ…悠香!!!!」


もう堪えきれなかった

涙が悠香の冷たくなった顔に零れる



「悠香…もう1度…1度だけでいいから…

だから…起きてくれ…
目を…開けてくれ…「いい加減にしろ!」


それでも尚、肩を揺らし続ける俺の手を弘斗が掴んだ。