朝早くの病院は気持ち悪い


人だらけなはずなのに、誰もいなくて。

ひんやりした空気が流れている。



俺はエレベーターに乗り込む。

それなのに一向に動き出す様子がなくて。



「…………あ」


ボタン押すの忘れていた。


動揺してる。

俺、こんな当たり前のことを忘れてしまうくらい動揺している。



「ふぅ~」

と、息を吐き出して『3』のボタンを押す。



落ち着け

悠香は死んでない


生きてる


いつものようにドアを開ければ
呼吸している悠香がいる。


いる


いるんだ



絶対、いるから



【チーン】


3階なんてあっという間で。

なぜだか震える足


俺はその足を無理矢理動かしてエレベーターから降りた