どうして俺はこんなにも大切なことを忘れていたのだろうか

悠香の病気は治るものばかりだと思っていた。


いや…そう思いたかっただけなのかもしれない。



『大樹くん…知ってたの??』


俺が何も言わないのを見て黙っていた長瀬さんが口を開く。


黙ったまま俺は頷く。

あのときはまだ、村瀬の妹が悠香だとは知らなくて。


すっかりそのことを忘れていた。




『今日、聞いたの。

ユウの余命が…早くなったこと』


余命ガ早クナッタ…??



『検査したらね…転移が見つかったの

大腸と肝臓に。


少しでも長く生きれるように抗ガン剤の治療することになった。

副作用で髪の毛が抜けたりすることもあるんだって。


それに抗ガン剤で治療したからって治るとは限らない。


それでもあんたはユウと付き合える?
無理なら今すぐ別れて。

ヘンな同情なんていらない。

ユウが傷つかないうちに別れて。』


別れるつもりなんてこれっぽちもない。

そんなことよりも余命が早くなったことのほうが衝撃的だった。


転移していたなんて思いも寄らなくて。

元気な悠香の笑顔が頭から離れない。



悠香…できることならお前と変わってやりたい。

辛いだろ?
苦しいだろ?

俺はずっと傍にいるから

お前から離れたりしないから


だから元気になってくれよ…