『大樹くん?あなたのせいじゃない。
自分を責めないで。』
病室に駆け込んだ長瀬さんは俺を見て微笑む。
でもそんなこと言われてもまったく安心できなくて。
病室から逃げ出したい気分だった。
『木村、気にしないで。
こういうこと…今までにもあったから』
村瀬のフォローだって俺にはなんの効果ももたらさなかった。
ただひたすら、胸が苦しくて。
『今日は…帰ってもらっていいかな?
悠香ちゃん…多分今日はもう起きないから』
俺と弘斗はその長瀬さんの言葉を聞いて病室を出た。
廊下での俺と弘斗との間には会話なんていっさいなくて。
黙ったまま病院を出た。
「大丈夫、大丈夫だ…大樹。
ユウちゃんを信じよう」
弘斗が俺の肩を叩いた。
でも返事なんてできるワケがない。
だってもし俺があそこで呼び止めなければ
悠香は体調を崩さなくてよかったのかもしれないのだから。
「ユウちゃん…本当にお前のこと好きなんだって。
初めて本気で好きになれたんだって。
だからお前がそんな顔してちゃいけないだろ?
お前が笑ってなきゃ…ユウちゃん、悲しむぞ」
弘斗の顔を見ると微笑んでいて。
俺が笑ってないと…
そうか、そうだよな。
こういうとき俺が暗い顔してどうするんだ
「分かってるよ、ばーか」
俺はそう言って笑った。
笑顔…そうだ、忘れちゃいけない大切なモノなんだ
悠香
俺は笑ってるから
だからお前も笑えるくらい、元気になれよ