「あれ…村瀬?」


教室に忘れ物を取りに来るとそこには村瀬の姿があった。



『あ…木村』


俺の声で振り向いた村瀬はなぜか立ち上がる。

そして、俺は気づいた。



今、村瀬が座っていた場所は弘斗の席だということに。



「なんでお前、まだいんの?

もう部活、引退したんだろ??」


3年の俺たちは今年の夏、引退をむかえた。

まあ俺は部活に入ってなかったから関係ないけど。



『別に…いろいろあるじゃん。』


村瀬はまた弘斗の席に座って、
俺は自分の席に座る。



『学祭のとき弘斗、遊び人だった、って言う話したでしょ?


今の弘斗を見てると思い出すんだよね…


なーんか、懐かしくなる。

ん?懐かしいっていう表現はおかしいかもしれない。


でも、懐かしいんだ。

中学生の頃の弘斗みたいで。


けど、あたしはイヤ。

今の弘斗は腐ってる。


人間として、サイテーだと思う』


村瀬はジッと黒板を見つめていた。


俺は村瀬の背中を見つめていた。




弘斗…今、お前は何してるんだ??