社内恋愛発令中【完】

今まで、男の人に服を選んでもらう経験はなかったからだ。



「…ありがとうございます」



小さく呟いた声を、蓮也さんは聞き逃すことなく



「どういたしまして」



あたしにいつもの笑顔を向けてくれる。



駅前だったその洋服屋を出ると、すぐに駅が見えた。



あたしは振り返って軽く頭を下げる。



「また明日ね、詩苑ちゃん」



「はい!またあした!」



ヒラ、と手を振る蓮也さんに背を向けて駅まで歩いた。



上がる口角を抑えきれない。



ワンピースの入った袋を抱えて、ホームへと向かうのだった。