社内恋愛発令中【完】

だけど声が、どこか悲しそうだった。



「本当は口移しなんてするつもりじゃなかった。でも双葉が酒に弱いこと知ってたからやったんだ」



「どういう…?」



「部長が女連れ込んでキスまでしたって、俺の中で許されることじゃなくて。キスしたまではいいけど、罪悪感で押し潰されそうで」



波が足元に寄せては引いていく。



人の騒ぎ声のしない海には、ただ蒼井さんの声が聞こえてくるだけ。



「自分を抑えることができなくてキスして、嫌われるのが怖かった。酒で無かったことにできるなら、そうしようと思った」



蒼井さんの影が下がっていく。



自嘲気味な笑いが、蒼井さんから漏れた。



「だから、あの日言ったことも本当なんだよ」



顔を上げた蒼井さんの、言葉にできない切ない表情が胸を締め付ける。



『バカでも分かるように言うよ』