社内恋愛発令中【完】

そして仕返しのつもりなのか、不意にあたしの手を握る。



蒼井さんの思惑通り、あたしは口を閉じて固まった。



「俺の勝ち」



唇の片端を持ち上げ笑う、いつもの笑み。



恥ずかしくてたまらないのに、どこか心地よいこの感じ。



もっと距離が埋まればいいのになんて、そんな勇気も持てないくせに願って。



どうして、と聞いてはいけない気がして、あたしはその手を握り返した。



一回りも二回りも大きな手が、あたしの手を包んでいく。



恥ずかしいのに、今すぐ逃げ出したいほど恥ずかしいのに、離したくなかった。



もしかしたら、からかわれているかもしれない。



もしかしたら、遊ばれているかもしれない。



だけど、理由を聞く勇気は持ち合わせていないから、今はこのままで良いとその手を離さない。