社内恋愛発令中【完】

「蒼井さんは、」



キッチンの方にいる蒼井さんに、あたしは聞こえるかどうかの声で呟いた。



「どうして、あたしを家に上げてくれたんですか」



いつかの言葉。



あたしを家に上げるわけにはいかないと言った言葉を、今でも覚えている。



蒼井さんはコップを二つ持って戻ってきた。



それを起き上がったあたしに渡しながら言う。



「上司として当たり前なことをするだけ…って言ったの覚えてる?」



コップからは湯気が立ち込み、ココアのいい香りが漂っていた。



「覚えてます」



あの日は自分の気持ちに気づかないまま、ただショックを受けていたのを覚えている。



「双葉が部下にしか見えてなかったら、きっと上げてないよ」