目の前であたしのケータイを取り上げたのは、さっき別れたはずの遥さんだった。



「どうして…?遥さん…」



「部長は仕事中でしょ?秘書なのに仕事の邪魔していいと思ってるの?」



遥さんの笑顔が歪んでいた。



あたしの知る遥さんの表情はどこにもない。



「ねえ、私が部長のこと狙ってるって知ってたでしょ?」



「…え?」



遥さんの言葉に、あたしはいつかの言葉を思い出した。



『係長いい人だけど、私は部長の方が好きだなあ』



『優しくて、丁寧で、インテリ系イケメンでしょ?もろタイプ』



あの日の遥さんは、冗談を言っているような目だった。



ノリで言っていると思ってた。