「ちょっとお腹痛くて…」



あたしは咄嗟に嘘をついていた。



「なになに便秘?」



クスクスと笑う蓮也さんは、トイレ行ってきな〜と言い残し、そのまま歩いて行く。



あたしはその場でほっと一息。



会社の中に、そんなことをする人がいるなんて言えない。



蓮也さんの性格なら、きっとあたしを助けようとしてしまうだろう。



そんな心配も迷惑も、かけてはいけない。



「おはようございます」



いつもの部屋に入り、まだ少し震える手で椅子を引く。



震える手は、パソコンを起動するだけの行動を難しくさせた。



なかなかボタンを押せないでいると、隣から腕が伸びてくる。