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「わり、練習遅くなっちまった」
「大丈夫、こっちも少し伸びてたから。
さて、3人集まったね」
みんなが神妙な面持ちになる。
「どうして、知恵はあのままポジション、譲ったの?
前までは絶対に取るって燃えてたのに…。
誰か心当たりないの〜?」
「…」「…」
「無さそうだね〜。
…やっぱ、押しかけて聞くのが手っ取り早そうだね。
ちゃんと話してくれるかは別だけど〜」
「知恵は選抜メンバー取るために頑張ってたのに。
あの顧問、前日までは知恵でいいよみたいに無気力だったのに急にあんな権限もったかのように喋り出して…」
「明らかに柚歌先輩だろ。
何か操作したに決まってる。
そうじゃなきゃ、知恵がこんな苦しむわけない。
くっそ、今度こそ知恵のことを傷付けないようにみんなで守ろうとした矢先…!
いつも傷付くのは知恵ばっかだ…。
何の罪があんだよ、大好きなバスケやって何であんな苦しまなきゃなんねーんだよ!
柚歌先輩はいつもそれを見て楽しんでる…あいつは何1つ人間の心を持ってねーよ。人の心を痛めつけて遊んで…」
嶺央が悔しそうに地面を叩く。
「苦しむのは当然じゃないですか、何を言ってるんです?
あんな奴こそ、痛めつけられて当然。
柚歌先輩がかわいそうです」
ボソリと絇瑠がつぶやきながら、横を通り抜けていく。
「てめっ…」
その言葉にキレた嶺央が拳を振り上げる、
パンッ!!!!
乾いた音が夕暮れの中響く。
亜衣が嶺央よりも先に絇瑠を平手打ちしていた。
驚いたように眼を見張る絇瑠。
そして、亜衣が涙を流しながら
「あんたに知恵の過去の何がわかるっていうの!?
何にも知らないくせに!!!」
「知ってるよ!!!!
好きだったから全部聞いたんだよ!!!
でも、好きな奴がこんな酷い性格だと思わなかったよ!!!」
絇瑠が負けじと叫び返す。
「酷い性格…!?
どこがよ!!!
あんたは本当の事実を知ってない!!!
どうせ、あんたも知恵の悪い噂しか聞いてないのよ!!!
あの柚歌が作ったデマ情報を信じて、知恵を傷付けたあんたの方がよっぽど酷い性格よ!!
もう2度と知恵と私達の前に出てこないで!」
亜衣は大きく叫ぶと、走り去っていった。
「俺だって2度と会いたくねーよ!!」
「ばかだな、お前」