「っ」
言葉に行き詰まる。
SGを譲る…?
お母さんをクビ…?
その時、知恵の頭に3年前の記憶がフラッシュバックする。
『あの時のこと、忘れてないわよね?』
『負けないとあなたの家族めちゃめちゃになるわよ?』
『どうしてくれるんだ!知恵!
たかが、バスケじゃないか!
おかげで俺はこんな目に…全部お前のせいだ!!!!』
なんで…いや、分かってる…けど…。
やだ。こんな似てる環境…
また、同じことを繰り返すことになるの?
嘘だ…嘘だと言ってよ。
また、前みたいなことを引き起こしたいわけじゃない。
なんで?
なんでこの時期にこんな目に合わなきゃいけないの?
「あなたの家、結構家計が苦しいんじゃなくて?
どっかの誰かさんが好き勝手にバスケやってたから…。
これ以上また、自分のお母さんに迷惑かけるつもり?」
…迷惑かけたくない。
でも…嫌だ。バスケがしたい。
前は自分の好きなことを何も考えずにやって、全てをめちゃくちゃにしたんだった…。
「ふふ、
あなたはそんな風に悔しがっていなきゃダメなのよ。
あなたはあたしの一生の下僕なんだから。
ねぇ、SG譲ってくれるわよね?」
今はただ、柚歌の存在が怖くて仕方ない。
操り人形にならないって、呑まれないって決めたのに。
やっぱり、わたしは1人じゃ何もできなかった。
ーーーー弱かった。
「分かりました」