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ガチャンッ!!!!!


「わっ、知恵どうしたの?」


息を切らしながら体育館の扉を開けた知恵に巫美が気付く。


「…ちょっとね」


苦笑いしながら返事をすると、亜衣は察したのか、


「嫌なことあったなら、バスケしよう。

忘れちゃいな」


笑顔でボールを渡してくる。

後ろでは後輩達が心配そうに知恵に話しかけてくる。


「知恵先輩、どうしたんですか?」

「顔暗いですよ!いつもの明るい先輩じゃない!」

「何があったのか分かりませんけど、元気出してください!」

「知恵先輩が元気じゃないと、女バス盛り上がりませんよ!」


「ほら、ね?」


みんなの優しい言葉に涙をこらえながら、知恵は前を向く。


「うん!」


大丈夫。

みんな、わたしのことを嫌ったりしない。

裏切ったりしない。


2年もこの学校で生活してるんだ。


大丈夫。負けない。


昔と同じことを繰り返すもんか。


その日、柚歌は部活には顔を出さなかった。