「知恵っ!」


亜衣が放心状態の知恵の腕を引き、自分の後ろに隠す。

嶺央もまた、知恵を庇うように立つ。

巫美がその女の人を睨みつける。

絇瑠だけがポカンッと立ち尽くす。


「え、ちょ、先輩方どうしたんすか?」


知恵は激しく動揺し、目が挙動不審に動いている。


すると、女の人はさも、愉快というように笑いながら、口を開く。


「こんにちは。
巫美ちゃんと亜衣ちゃん」


「そんな風に呼ばないでくれますか〜?

名前が汚れちゃう〜」


「…」


あくまで口調は変えないが明らかに厳しい顔をする巫美と、黙って睨む亜衣。


「先輩に対してそんなこと言っていいのかしら?
自分の立場、わきまえたほうがいいわよ。

まぁ、いいわ。

お久しぶり、










・・
…若林さん」


ビクッと肩が震える知恵。


「……あ…、う…」


「あ、違ったわね。
若林…じゃなくて……確か…、

あ、そうそう琴吹だったわね。


琴吹知恵さん」


知恵は思わず顔を伏せる。

反対に絇瑠が驚いたように目を開く。