なんだかとんでもないところにきてしまった気がして、大人げなく周りをキョロキョロ見渡してしまう。





はじめに出迎えてくれた、可愛い系の男性。
マスターと思わしき、色っぽい髭の似合う男性。



……あ、
カウンターの奥に、若い女性と話す男の子がもう一人いる事に気がつく。






「あいつが作るカクテル、人気なんですよ」



マスターらしき彼が声をかけると「はい」と向こうで返事が聞こえる。クルッとこちらに顔を向けた男性は、中性的な顔をした男性であった。



「はい、マスター」


「このお姉さん達にカクテル、作ってあげて」



……ちらりと視線が合う。


袖捲りした腕が浮き出るように白い。
細くて長い、器用そうな指先がグラスに軽く触れる。




「甘口と辛口、好みとかありますか」





唐突な質問に少しドキッとしてしまったが、さすがに何も言わずに作るのもどうかと思ったのだろう。


「ジンベースが好きかな……」


「かしこまりました」


お酒を取りに行った彼の後ろ姿をぼんやりと見つめる。
話してる時には気がつかなかったが、髪を後ろで一つに束ねているらしい。


……普段は髪を下ろしているのかな。
素朴な疑問が浮かんだが、その疑問もすぐに消えて。



「さっきの人、やっぱりこのお店のマスターなんだねっ。かっこいー!!」


菜月の声をぼんやり受けながら、
私はシェイクする中性的な彼から何故だか目が離せなかった。