一滴の涙が、ハラハラと舞い落ちた。


「本田……」


「幸人、あたしは幸人のことが好きだよ。」


「――…え?」


「だけど幸人は、あたしの事好きじゃないもんね。」


あたしは少しだけ笑うと、荷物を持った。


「莉緒ちゃん、レッスンは?」


静かに口を開いたお義母様に、ニッコリと笑った。


「もう、必要ないですから。」


あたしは、東條家を出た。