「じゃあ、あたしは帰るから」


そういって、屋上を出た


「待って!美野里!」


葛原君の叫ぶ声が聞こえたけど、聞こえない振りをした


あたしはやっぱ、弱いな......


ほら、今もこうやって向き合うことから逃げている......


こんな奴、誰も好きになんかならないか......


今までの自分が酷く滑稽に思えた



そんな醜いあたしに必死に言葉を投げ掛けてくれた葛原君


憎むんじゃなくて、感謝しないと......


だけど、こんなあたしは、葛原君に相応しくない


あのときの、出来事はある意味当然のことのように思えた


葛原君には、もっといい人がいるだろう......


そのほうが何倍もいい


「あのとき、告白しないでよかったかもなー」


自分の本当の気持ちに気づけた


もう、あたしはそれだけで十分だ


この思いは誰にも言わずに、胸に秘めておこう



あたしは、空を見上げながら、呟いた





「ありがとう、あたしに恋を教えてくれて....。大好きだったよ、聡......」