かりかりと爪で絵の具を擦ってみるけど、あんまり効果がない。まあ、いいか。どうせ誰も気にしない。
また窓に目を戻すと、目の前には立派な高層ビルが建っていた。入り口の門には「グランドホテル マカベ」と書かれていた。パーティー会場はホテルらしい。
ホテルのエントランス前で車が停められた。お父さんはドアを開けて私が降りるのを待っている。車に乗って一時間ほど経っていた。
車から出ると、お父さんは車に顔を突っ込んで運転してくれたお兄さんと何かを打合せしていた。ちょっと長くなるみたい。私は手持ち無沙汰になった。フラフラ歩きまわるなと釘を刺されたばかりなので、私は仕方なくホテルの入り口を見渡す程度に留めた。えらい。
ホテルの入り口はガラス扉の自動ドアで、縁に木枠がはめられている。自動ドア越しに見るとエントランスが1つの絵のように感じたのは、美大生だからかもしれない。
エントランスにはカウンターと、ソファにテーブル。室内の噴水。豪華なシャンデリアも下の方だけ見える。贅沢この上ない。
シャンデリアに目をとられていると、どこからか視線を感じた。出所はすぐにわかった。目線を少し下に移すと、シャンデリアの下に男性が立っていた。
映画から飛び出してきたような端正な容姿をしていた。もしかしたら異国の人なのかも。黒い髪は顔にかからないようにきちんとしたサイドに分けている。シャープな銀縁眼鏡がきつい印象を与えている。その奥の目が、じっと私を見ている。
目の色は緑だった。不思議な色彩で、緑にほんの少しの青を混ぜたような色。じんわりと舌がその味覚をとらえた。すうっと清涼感が口全体を覆った。ペパーミントだ。こんな色は初めてで、ますます私も彼を見つめた。
彼は微動だにせずこちらを見ている。もしかして私を見ているのじゃなくて、私の後ろを見ているのかな。私はお父さんのいる後ろを振り返った。
ちょうど打ち合わせが終わったのか、お父さんは車の扉を閉めようとしていたところだった。また、自動ドアに顔を向けると男性は居なくなっていた。
「お待たせ。さあ、行こうか」
「うん」
幽霊だったのかもね。口の中に広がったペパーミントを思い出して、ちょっと寒気がした。
また窓に目を戻すと、目の前には立派な高層ビルが建っていた。入り口の門には「グランドホテル マカベ」と書かれていた。パーティー会場はホテルらしい。
ホテルのエントランス前で車が停められた。お父さんはドアを開けて私が降りるのを待っている。車に乗って一時間ほど経っていた。
車から出ると、お父さんは車に顔を突っ込んで運転してくれたお兄さんと何かを打合せしていた。ちょっと長くなるみたい。私は手持ち無沙汰になった。フラフラ歩きまわるなと釘を刺されたばかりなので、私は仕方なくホテルの入り口を見渡す程度に留めた。えらい。
ホテルの入り口はガラス扉の自動ドアで、縁に木枠がはめられている。自動ドア越しに見るとエントランスが1つの絵のように感じたのは、美大生だからかもしれない。
エントランスにはカウンターと、ソファにテーブル。室内の噴水。豪華なシャンデリアも下の方だけ見える。贅沢この上ない。
シャンデリアに目をとられていると、どこからか視線を感じた。出所はすぐにわかった。目線を少し下に移すと、シャンデリアの下に男性が立っていた。
映画から飛び出してきたような端正な容姿をしていた。もしかしたら異国の人なのかも。黒い髪は顔にかからないようにきちんとしたサイドに分けている。シャープな銀縁眼鏡がきつい印象を与えている。その奥の目が、じっと私を見ている。
目の色は緑だった。不思議な色彩で、緑にほんの少しの青を混ぜたような色。じんわりと舌がその味覚をとらえた。すうっと清涼感が口全体を覆った。ペパーミントだ。こんな色は初めてで、ますます私も彼を見つめた。
彼は微動だにせずこちらを見ている。もしかして私を見ているのじゃなくて、私の後ろを見ているのかな。私はお父さんのいる後ろを振り返った。
ちょうど打ち合わせが終わったのか、お父さんは車の扉を閉めようとしていたところだった。また、自動ドアに顔を向けると男性は居なくなっていた。
「お待たせ。さあ、行こうか」
「うん」
幽霊だったのかもね。口の中に広がったペパーミントを思い出して、ちょっと寒気がした。
