直人くんが渡井さんを迎えに行ってから約30分がたった。 「海実ー。」 「どうぞ…」 渡井さんは直人くんに続いて恐る恐る病室に足を踏み入れた。 「久しぶり。心配かけてごめんね。」 「ううん。その…大丈夫なの?」 数秒間の沈黙が続く。 私は重たい口を開いた。 「…全部話すね。」 無言で頷いた渡井さん。 「私ね…脳腫瘍で、もう、治らないんだ。」 こんな話、ごめんね。