冷たい手


「おー…中森が遅刻だなんて珍しいな…。」
「ちょっと寝坊して…。」

それはそいつの身なりからして
よく伝わった。
髪の毛は飛んでるし
ボタンは掛け間違ってるし
ネクタイはずれてる。
相当焦ってたのか
眼鏡もずれてる。

「まぁ、座れ。今日はだな・・・」

先生のうんちくよりも
そいつの身なりについてどう突っ込んでいこうかと
そっちに全身全霊を預けていた。

「おはよ。」
「おはようございます。」

かちんこちんにかたまって挨拶するそいつ。
ぎこちない挨拶にも大分慣れてきた。

「君、髪の毛ぼさのばだよー。」

そういいながら髪の毛をさす。
そういうと焦ったように
「うぇ!?どこ?え。どこですか?」

髪の毛を抑えるかのように
机に顔をのせる。