【完】恋する話。

時間は8時。部屋でゴロゴロタイムの私はぼーっと天井を見上げる。

悠里は9時に帰ってくるし、そろそろ上坂君のところに行こうかなぁ。

まず、なんて告白しよう?

「好きです。って言おうかな…シンプルが一番!」1人で喋ってみる。

こーゆう時は悠里がいてくれたらな。

なんて思っても来ないけど!ラブラブタイムだもんね。

私は乾いた髪をさらりと下ろす。

黒のレギンスをはいて、スヌーピーの絵がプリントされたロングTシャツの上から薄い生地の上着をはおる。

「よし。」1人でポツリとつぶやいて、部屋を出る。

星を見るってことは、この階のベランダルームか!

私はなぜか足早にその場所へ向かう。

だけど、その足は目的地に着いた瞬間ピタリととまってしまった。

上坂君は確かにいたよ?だけどね。かわいい女の子もいるの。

ぱっちりとした二重の大きな目と、長い睫毛。

ぷるぷるの形の良い、ピンクの唇。

顔は小さく、スラリとした体型。

髪は緩やかなウェーブで淡いキャラメル色。

服だって高そうでオシャレなの着てる。

もしかして彼女、だったり……?

すごい美人さんじゃんか。

「ふぅ…」静かに息を吐く。

気を緩めたら、涙がこぼれそうだった。

「じゃあ、私、いくね。」かわいい女の子が綺麗な声でしゃべって自分の部屋へと戻っていく。

一瞬だけ、目があったんだけど、するりと目線は外されてしまった。

私はかわいい子が部屋に行ったのを確認するとゆっくり上坂君の方へ歩き出す。

「あ、かみ、さ、かくん?」恐る恐る声をかける。

「あ、ほんとに来たんだ。」こっちを見て微笑む上坂君。

「さっきの人、彼女?」私が聞くと、

切なそうに目を細めて、

「さぁ、どうなんだろうね。俺にもわかんないよ。」

と、小さく呟く。

それは、つまり、上坂君があの子に恋をしているってことで。

泣きそうになった。

失恋したこともあるけど、上坂君が悲しそうに笑うから。

上坂君は今にも泣きそうな顔でニコッと笑うと「そろそろ戻ろう。横井達ももう戻ってるだろう。」という。

「ぅ、うん…」声が震える。

私の部屋まで送ってくれた上坂君に「ありがとう。」と小さくお礼を言うとダダッと部屋に駆け込む。

「ちょ!?桜香!?どうしたの…」

呆然と私をみる悠里。

「ふっ…ぅうっく…う…、ゆう、りっ」
涙がとめどなく溢れる。

そんな私を悠里は抱きしめ、背中をさすってくれた。