「よし、これでいいかな。」

保健の先生も文化祭を楽しんでるのかな、保健室には誰もいなかった。

私の膝には大きめの絆創膏が貼られてた。

「ありがとう。」「いーえ。」

蓮君は私の膝から私に視線をうつして、

「また、桐谷んとこ、行く?」

と言う。

不機嫌な顔がかわいくて。

こうやって好きな人の表情を見れるのは楽しい。

「行かないよ。だって、蓮君に誘われたんだもん。」

ニコッと笑ってみせる。

すると蓮君もあたたかい笑顔で

「じゃあ、行こう。」

と言って、私の手をとる。


ちょっとひんやりとした、蓮君の手。

大きくて、綺麗で、いつも私を包んでくれる。

花火を見たいよ。

わたしね、蓮君と一生続いていたいよ。

付き合ってるわけじゃないけど。

けど…蓮君が好きな人のところへ行くのなら私は応援する。

恋ってそういうものでしょ?

いま、目の前にあるあなたと、こうやって一緒にいたいんだ。

歩いて、屋台をトコトコまわる。

いつ言おうか。

りんご飴屋さんの屋台の前で私はピタリと止まる。

「れっ、蓮君…っ!」

私がいうと、蓮君はクルリと振り返る。

「あ、あの…」

私の声は予想以上に大きく、生徒達がチラチラとこっちを見る。

私は俯くことしかできなくて。

「花火、一緒に見ませんか。」

そう言ったのは私じゃない。

私は顔をあげる。

「ほ、んとう…?」

照れ隠しなのか口元を隠して、
頷く蓮君。

「返事!見るか見ないか。」

蓮君が言う。

「見る!!」私はパアッと笑って言う。

嬉しい。好きな人とみれるんだよ!?

私達はトコトコと歩みを進める。

生徒達がザワザワと

「2人やっぱ、できてんじゃん!」
「付き合うの〜!?」「蓮君っっ」

騒いでる。


私達はひとけのない、プールへと移動。

「ねぇ、蓮君?」「ん?」

おそるおそる、聞いてみる。

「好きな人…とはいいの?花火見なくて…。」

私がそういうと、「はぁっ」と大きなため息をついて頭を抱え込む。

「これから見んだろ。花火。」

いや、だから、私と見るから好きな人とはみれな…ん?んんんん?

蓮君は。これから。好きな人と花火を見る。

え?待って待って?

そーゆこと?ええ?

つ、まり…

「私が蓮君の、好きな人……!?」

待て待て待て。

すると蓮君は「そーだけど?」と呟くように言う。

それってそれって…

「わ、私も好きな場合、どうしたらいいんでしょうか……。」

ガバッと起き上がる蓮君。

「え!?桜香、おれのこと好きなの?」

めをまんまるにしておもしろ。ふふ。

「そーゆー、場合は
こほんっ」

蓮君は小さな咳払いをして、私をみる。

「桜香。おれと付き合って下さい。」

ドキン…ドキン…

「は、い…!」

声が震える。

もうすぐ。
花火が打ち上がりますーーーー。