「あ、来た。」はるひこ君はお化け屋敷の前で座っていた。

横には、はるひこ君と同じ系統のチャラそうな男子もいて。

その男子は私をみると、そそくさとどこかへ行ってしまった。

「うーん、まわりながらしゃべろうか。」

え。でも。

「ご、ごめん、他の人とまわろうとおもってて!!」

蓮君が誘ってくれたから。

行かなきゃ。

「じゃー、たい焼き屋さんだけついてきてよ。」

手を引かれ、強引につれていかれた。



「で、告白の返事なんですけど…。」

「やだ。聞きたくない!」

はぁ?お子ちゃまですか。

たい焼きを頬張りながら、ベンチに座る私たち。

「これ食べて、返事したら私、行くからね!」

はやく、はやく。

蓮君にあいたい。

会ってしゃべりたい。

「やだ。……夜に花火の打ち上げあるだろ?あれをみた男女は一生続くんだってさ。」

儚げな目線を空に向け、しゃべるはるひこ君。

私。それ、蓮君と見たいよ。

「俺、桜香と見たいです。」

そういう、はるひこ君の瞳はいつになく真剣で心がゆれた。

「ごめーーーー「桜香?」

私が口を開いたそのとき。

誰かに呼ばれて、顔をあげると、

「れ、んくん…?」

蓮君がいた。

蓮君は少し頭を下げると、そのままどこかへ行ってしまう。

「待って!」立ち上がろうとすると、はるひこ君に手を掴まれ、行けない。

「はるひこ君。ごめんなさい!
ゆっくり返事を考えたって私が想ってるのは蓮君、ただ1人だったの。一緒にまわりたいし、夜の花火だって見たいよ!だから、告白はすごくすごく嬉しかったけど、はるひこ君とは付き合えないです…、ごめんなさい!」

ふぅっと、いきをはく私。

これが答えなんだ。

「はぁー、もういいよ。行けよ。」

そっぽを向いてしまうはるひこ君。

「ご、ごめんね!…あ。」

私はポケットをさぐり、蜂蜜レモンのキャンディーを取り出す。

「はい!元気でるよ、じゃあね!」

私はバッと渡すと、駈け出す。

誤解なんてやだよ。

好きな人にはされたくない。

はやくはやく、会いたいーーー。

ドンっっ、

「キャアっ」

勢いよくぶつかって倒れ込む私。

「ごめんなさっ…」

ぶつかった人は女の子で、同い年の子。

「ごめんね!」その子はそういうとまた駆け出していく。

膝には血が流れ、私はハンカチで押さえる。

そのとき。

「桜香!」

人の波をかきわけて、蓮君がきた。

「大丈夫!?」慌てる蓮君は私をふわりと抱きかかえ、いわゆるお姫様だっこというやつをやってきた。

「保健室、いこ。」

私は何もいえず、静かに体をまかせた。