「みっ、みさきちゃんが好きなんじゃないの…っ!?」

ゆらゆらと上坂君の背中で揺れながらしゃべる。

家までまだかな。

「そう、思ってたんだ。昔から一緒にいて、美咲が好きなんだって。けど、さ、旅行で好きな人っていうかこいつだけは取られたくないって子ができてさ。」

上坂君の背中は大きい。

フワフワの髪の毛がかわいい。

いい匂いもする。

こんなに愛しいのに。

彼は誰のことを想っているのだろうか。

「そうなんだ。」自分の頭を上坂君の肩にたおす。

すると、上坂君が

「桐谷って人、好きなの?」

と、小さく言う。

「すっ、好きなわけないじゃん!他に好きな人いるもん!」

慌てて訂正。

好きな人に誤解されるのが一番やだもんね。

「誰だろうね、鳴海の好きな人。ふふ」

笑うとかすかに背中が揺れて、なんだかくすぐったい。

「上坂君のも誰だろうね。」

「上坂君じゃなくていいよ。」おんぶしたままそういう上坂君。

でも。家に着いちゃったよ。

「じゃあ、蓮君!ありがとう。」

背中からおりて、そういうと優しく微笑む。

「桜香、どういたしまして。じゃあな」

桜香って…桜香って…。

かけていく…蓮君の背中をみつめながら私は嬉しさにひたっていたーーー。