コートにいたうちの2人が高遠くんの両肩を担いでベンチに来る。


「ゆず、よろしく」


苦しそうな表情で私に託して、2人はコートに戻っていった。

コートに目をやると、今にも相手にかみつきそうな殺気立った目をした羽柴君がいた。


「羽柴くん!」

名前を呼ぶと羽柴君は我に返ったようで、殺気が消えた目で私を見た。

私は首を横に振る。


ダメ、コートでそんな目をしちゃダメ。


羽柴君は「大丈夫」と言うように、私に手のひらを向けた。



「麻衣ちゃん、ごめんバケツに水いっぱい入れてきてくれる?あと前田くん、悪いけど体育教官室から氷あるだけもらってきて!」