「明日は1日休みだから、各自ゆっくり疲労回復に努めること。それじゃ解散」
監督の号令で4泊5日の合宿が終わった。
さくらちゃんと一緒に帰ろうと近付くと、さくらちゃんは私の顔の前に手のひらを広げて制した。
「今日は高遠くんと帰んなさい」
え、何で?
「付き合い始めが肝心よ。これから嫌でも色々障害が出てくるんだから、最初くらい恋人気分を味わっておきなさい」
意味深なさくらちゃんの言葉。
どうしても一緒には帰ってくれないって突っぱねるから、しぶしぶバイバイした。
ていうか、さくらちゃんとこんなやり取りしてる間に高遠くん帰っちゃったんじゃないの?
もう見える範囲にいるのも数人だけだし。
ピロピロピロ〜♪
電話着信音。
バッグからスマホを取り出して画面を見ると、そこには高遠くんの名前。
「も、もしもし」
『あ、先輩。高遠です。もう帰っちゃいました?』
「ううん、今校門出るところ」
『今、部室にシューズ置きに来てるんで、一緒に帰りませんか』