コスナー氏は、執事からマリアンヌの手紙を受け取り、小躍りしようなところをようやく抑えました。
マリアンヌとは、随分会っていなかった。最後に公園で会ってから、1か月近く経っていた。おそらく、ジョンのことで大変なんだろうな、と予想していたので、マリアンヌに会って煩わしい思いをさせないでおこうと気塚っていました。
ケヴィンは、あのスラム街でジョンに会いましたが、久しぶりに会った時、ジョンと分からないぐらい垢抜けていました。見た目はすっかり小綺麗になり、さっぱりとし、髪も切ったようです。
洋服も前は汚れていたのに、洗濯をしたのか白くなっていました。
そして、前のどんよりとした顔はなく、目がキラキラ輝いていて、生気がやどるようになっていました。ジョンの変化を見て、ケヴィンはマリアンヌの授業はうまくいっているのだろうなと想像し、顔がにやにやしてしまうのを抑えられませんでした。
ジョンに話しかけると、「僕、アルファベットの半分までできるようになったみたい。」と嬉しそうに言いました。それに自信が付いたみたいでした。ケヴィンはマリアンヌの手紙を読むと久々に訪問したいという事が書かれていたので、もちろん承諾の返事を書き、執事に渡しました。
マリアンヌは、ソワソワと鏡の前にいました。「あー、あともう少しで約束の時間だわ。」サリーに手伝ってもらって、服を着たのですが、まだ髪が結いあがっていません。
「早くしないと遅れちゃう。」サリーが新しい帽子を持ってきてくれました。その帽子は、エリザベスの仕事で得た賃金で買ったマリアンヌの初めて自分で買った帽子です。「マリアンヌさま、帽子を持ってきました。今からすぐお付けいたします。」そう言うと、マリアンヌの髪を手早くまとめて、頭のてっぺんにつば広の帽子を乗せ、ピンで留めていきました。出来上がると、マリアンヌは、鏡の中の自分に惚れ惚れとしました。
「なんて、可愛いのだろう。」その帽子を付けるだけで、マリアンヌは、国一番の美女になったようでした。
帽子は、最新流行の形でしたから、マリアンヌをとてもオシャレに見せてくれました。
マリアンヌにとって、こんなに贅沢したのは、物心ついてから初めてでした。
何せ、5人姉妹。お金がかかって仕方ありません。ほとんどの服は、姉妹で貸し借りしました。マリアンヌは、その帽子を付けて、完璧な装いになったと確信したら、急いでサリーと共に出かけました。
道中、あまり速く走ると、せっかく着飾ったのに、乱れてしまうので、早歩きにしました。コスナー氏の屋敷にようやく着きました。呼び鈴を鳴らすと、執事のロバートが迎えてくれました。
彼とは、もう顔見知りになっていたので、マリアンヌを見るとすぐに「お待ちしておりました、ミス・マクレーン。旦那様は、客間でお待ちでございます。」と言い、マリアンヌを通してくれた。客間に入ると、コスナー氏がそこにいました。
クルリと振り向き、笑いながらマリアンヌを歓迎してくれました。
マリアンヌも久しぶりにコスナー氏と出会えてうれしかったので、思わず笑みをこぼしました。
「やあ、マリアンヌ。久しぶりだ。長い間、連絡をくれなかったから、どうしたのかと思っていました。ジョンの勉強を見ていたのですか?」
マリアンヌはコスナー氏に近づいて、「ええ、そうよ。彼の授業に付きっ切りで、大変なの。でも彼はとてもいい子だわ。」
コスナー氏はニコリとほほ笑み、「ああ、ジョンはいい奴だ。さっ、立っているなんでよくないよ。座って。」そう言うと、マリアンヌを座らせました。相変わらずの上等そうな椅子でした。マリアンヌは久々に会うので、少し緊張して、オズオズとほほ笑みました。
「長い間、何の便りも出さずに申し訳ございませんでした。ジョンの勉強と家庭教師の仕事で忙しかったのですの。こんなに大変になるとは思いませんでした。でもとても充実しています。今までこんなに心が満たされたことがなかったというぐらい。」
「そうですか。それはよかった。そう言えばこの間会った時よりもずっといい顔していますよ。何だか輝いているようにも見えます。」そう言うと、ケヴィンはもう一度マリアンヌの顔を見た。マリアンヌの顔は、以前よりも(以前から美しかったが)、生き生きしている気がした。ケヴィンは何だか不思議な感覚に襲われて、彼女への愛しさが増した気がした。ケヴィンは、そんな自分の気持ちにとまどいを覚え、ごまかすために慌ててカップに口をつけたが、ふと目をやると、マリアンヌがなんとも可愛らしい帽子をかぶっていることに気がついた。「その帽子素敵ですね。新しく買ったのですか?」
「ええ、そうです。私の初めての私だけの帽子ですの。気付いて下さってありがとうございます。」どうやら、マリアンヌの仕事はうまくいっているようだった。その帽子は、マダム・ポムソンスの帽子だろうから、高かっただろうに。その帽子は、マリアンヌによく似合っていて、彼女を数段と魅力的に見せた。
「そう言えば、もう少ししたら、ブラウン伯爵家でパーティーがあるそうですよ。と言っても、2か月以上先ですが。」ブラウン家は、国有数の名家で、パーティーは豪華絢爛で有名だった。ケヴィンは彼女とぜひそのパーティーに出席したいと思っていた。最高に素敵な夜になるだろうから。しかし、マリアンヌが方を見ると、困った表情を浮かべていた。
「どうしたのですか?出席できないのですか?」すると、マリアンヌは「ええ行けないのです。」と言った。
「どうしてでしょうか?」マリアンヌは少し考えてから、ためらいがちに、「実は、私、もう少ししたら、スコットランドに行くことになっていますの。」
「えっ、何だって!?」ケヴィンは思わず大きな声を出してしまった。
「あっ、申し訳ございません。」ケヴィンは、動揺し立ち上がって部屋の中を行ったり来たりウロウロし始めた。それから、立ち止まり、「いつ行くのですか?」と尋ねた。「春先ですわ。ですから、あと2か月したら。」
「信じられません。本当ですか?」
「ええ。本当です。」
「嘘でしょう。ミス・マクレーン、嘘を言ってください。」
「いえいえ、本当ですわ。」マリアンヌも動揺し、気持ちが落ち着かなくなった。コスナー氏がこんなに取り乱すなんて、思ってもみなかった。何だか私まで悲しくなってきた。マリアンヌは少し涙ぐみました。
「家族でスコットランドに引っ越すことにしたのです。その方が、私たちにとって、色々とよいことになるでしょうから。」コスナー氏の方を見ると、彼は悲しみと怒りと困惑がごちゃ混ぜになった複雑な顔をしていた。ショックが顔にありありと表れていた。
「それは初耳でした。びっくりしました。いつ頃きまったのですか?」
「少し前ですわ。父がそうしようと提案してきたの。私もここロンドンに留まる理由がないし・・。」マリアンヌはそう言うと、窓の方を見た。
「仕事はどうするのですか?ジョンのことも。」
「それはロンドンにいられる間は続けさせていただくわ。でも、スコットランドに行ったら、もう見られることはできないでしょうね。」マリアンヌは残念そうな顔をした。ケヴィンは、椅子の方に戻ってきて座った。そして、手を組んでそこで1分ほど下を向いて黙って座っていた。それから、顔を上げていった。「私たちのことはどうなるのですか?」マリアンヌはそれを聞いて戸惑った。
「まあ、それは分かりませんわ。私たちの関係ってよく分かりません。私たちって恋人同士なのかしら?」ケヴィンはマリアンヌをジーっと見て言った。
「私は恋人だと思っていた。」マリアンヌは驚いた。「まあ、そうだったの。私は、そこらへんがよく分からなかったの。あなたは、会ったばかりだし、あなたが直接そう言ってくれたわけでもなかったし。」マリアンヌは少し批判がましく言った。
「確かに私たちは会ったばかりだが、普通の友人ではない。親密な関係を築いているものと思っていた。」
「ええ、そうですわ。でも、ごめんなさい。言っていいかしら・・?あなたは結婚する気がなさそうでしたわ。」コスナー氏は、黙りこくっているようだった。それから少しして話し出した。
「ああ、確かに私は結婚しない主義だ。結婚はしない。これからもね。ありがたいことに、私は爵位を持ってないから、結婚して子供を作らなければならない理由もないしね。私は、子供の頃、絶対に結婚しないでおこうと決めたんだ。愛のない結婚や形だけの結婚をして、夫婦仲が冷え切った人たちを何組も見てきたしね。」コスナー氏の口調には、個人的な怒りも入っているような強い感じでした。マリアンヌはコスナー氏がいつもと違う雰囲気を出したのに、少し怯えた。
「そうですの。では、私たちがこのまま一緒にいても結婚になりませんね。」
「ああ、ならない。私は結婚しない主義だ。」マリアンヌはそれを聞いて、目に涙がジワっとうかんでくるのを感じた。何で悲しくなるの?私、この人と結婚したかったの?
それにしても、あんまりにもきつくて残酷な言い方だわ。まるで、私が結婚する価値がないみたい。
マリアンヌはハンドバッグからハンカチを取り出し、涙をふきました。
「そうですか。では、私たちが付き合っていても何の意味もございませんね。私は、結婚したかったし、いずれそうするつもりです。あなたのことは好きで好意を抱いていましたわ。でも、ごめんなさい。あなたとは、付き合えませんわ。時間の無駄です。」そう言うと、マリアンヌは立ち上がり、お辞儀もせず、扉の方へ駆け足で去って行った。
マリアンヌとは、随分会っていなかった。最後に公園で会ってから、1か月近く経っていた。おそらく、ジョンのことで大変なんだろうな、と予想していたので、マリアンヌに会って煩わしい思いをさせないでおこうと気塚っていました。
ケヴィンは、あのスラム街でジョンに会いましたが、久しぶりに会った時、ジョンと分からないぐらい垢抜けていました。見た目はすっかり小綺麗になり、さっぱりとし、髪も切ったようです。
洋服も前は汚れていたのに、洗濯をしたのか白くなっていました。
そして、前のどんよりとした顔はなく、目がキラキラ輝いていて、生気がやどるようになっていました。ジョンの変化を見て、ケヴィンはマリアンヌの授業はうまくいっているのだろうなと想像し、顔がにやにやしてしまうのを抑えられませんでした。
ジョンに話しかけると、「僕、アルファベットの半分までできるようになったみたい。」と嬉しそうに言いました。それに自信が付いたみたいでした。ケヴィンはマリアンヌの手紙を読むと久々に訪問したいという事が書かれていたので、もちろん承諾の返事を書き、執事に渡しました。
マリアンヌは、ソワソワと鏡の前にいました。「あー、あともう少しで約束の時間だわ。」サリーに手伝ってもらって、服を着たのですが、まだ髪が結いあがっていません。
「早くしないと遅れちゃう。」サリーが新しい帽子を持ってきてくれました。その帽子は、エリザベスの仕事で得た賃金で買ったマリアンヌの初めて自分で買った帽子です。「マリアンヌさま、帽子を持ってきました。今からすぐお付けいたします。」そう言うと、マリアンヌの髪を手早くまとめて、頭のてっぺんにつば広の帽子を乗せ、ピンで留めていきました。出来上がると、マリアンヌは、鏡の中の自分に惚れ惚れとしました。
「なんて、可愛いのだろう。」その帽子を付けるだけで、マリアンヌは、国一番の美女になったようでした。
帽子は、最新流行の形でしたから、マリアンヌをとてもオシャレに見せてくれました。
マリアンヌにとって、こんなに贅沢したのは、物心ついてから初めてでした。
何せ、5人姉妹。お金がかかって仕方ありません。ほとんどの服は、姉妹で貸し借りしました。マリアンヌは、その帽子を付けて、完璧な装いになったと確信したら、急いでサリーと共に出かけました。
道中、あまり速く走ると、せっかく着飾ったのに、乱れてしまうので、早歩きにしました。コスナー氏の屋敷にようやく着きました。呼び鈴を鳴らすと、執事のロバートが迎えてくれました。
彼とは、もう顔見知りになっていたので、マリアンヌを見るとすぐに「お待ちしておりました、ミス・マクレーン。旦那様は、客間でお待ちでございます。」と言い、マリアンヌを通してくれた。客間に入ると、コスナー氏がそこにいました。
クルリと振り向き、笑いながらマリアンヌを歓迎してくれました。
マリアンヌも久しぶりにコスナー氏と出会えてうれしかったので、思わず笑みをこぼしました。
「やあ、マリアンヌ。久しぶりだ。長い間、連絡をくれなかったから、どうしたのかと思っていました。ジョンの勉強を見ていたのですか?」
マリアンヌはコスナー氏に近づいて、「ええ、そうよ。彼の授業に付きっ切りで、大変なの。でも彼はとてもいい子だわ。」
コスナー氏はニコリとほほ笑み、「ああ、ジョンはいい奴だ。さっ、立っているなんでよくないよ。座って。」そう言うと、マリアンヌを座らせました。相変わらずの上等そうな椅子でした。マリアンヌは久々に会うので、少し緊張して、オズオズとほほ笑みました。
「長い間、何の便りも出さずに申し訳ございませんでした。ジョンの勉強と家庭教師の仕事で忙しかったのですの。こんなに大変になるとは思いませんでした。でもとても充実しています。今までこんなに心が満たされたことがなかったというぐらい。」
「そうですか。それはよかった。そう言えばこの間会った時よりもずっといい顔していますよ。何だか輝いているようにも見えます。」そう言うと、ケヴィンはもう一度マリアンヌの顔を見た。マリアンヌの顔は、以前よりも(以前から美しかったが)、生き生きしている気がした。ケヴィンは何だか不思議な感覚に襲われて、彼女への愛しさが増した気がした。ケヴィンは、そんな自分の気持ちにとまどいを覚え、ごまかすために慌ててカップに口をつけたが、ふと目をやると、マリアンヌがなんとも可愛らしい帽子をかぶっていることに気がついた。「その帽子素敵ですね。新しく買ったのですか?」
「ええ、そうです。私の初めての私だけの帽子ですの。気付いて下さってありがとうございます。」どうやら、マリアンヌの仕事はうまくいっているようだった。その帽子は、マダム・ポムソンスの帽子だろうから、高かっただろうに。その帽子は、マリアンヌによく似合っていて、彼女を数段と魅力的に見せた。
「そう言えば、もう少ししたら、ブラウン伯爵家でパーティーがあるそうですよ。と言っても、2か月以上先ですが。」ブラウン家は、国有数の名家で、パーティーは豪華絢爛で有名だった。ケヴィンは彼女とぜひそのパーティーに出席したいと思っていた。最高に素敵な夜になるだろうから。しかし、マリアンヌが方を見ると、困った表情を浮かべていた。
「どうしたのですか?出席できないのですか?」すると、マリアンヌは「ええ行けないのです。」と言った。
「どうしてでしょうか?」マリアンヌは少し考えてから、ためらいがちに、「実は、私、もう少ししたら、スコットランドに行くことになっていますの。」
「えっ、何だって!?」ケヴィンは思わず大きな声を出してしまった。
「あっ、申し訳ございません。」ケヴィンは、動揺し立ち上がって部屋の中を行ったり来たりウロウロし始めた。それから、立ち止まり、「いつ行くのですか?」と尋ねた。「春先ですわ。ですから、あと2か月したら。」
「信じられません。本当ですか?」
「ええ。本当です。」
「嘘でしょう。ミス・マクレーン、嘘を言ってください。」
「いえいえ、本当ですわ。」マリアンヌも動揺し、気持ちが落ち着かなくなった。コスナー氏がこんなに取り乱すなんて、思ってもみなかった。何だか私まで悲しくなってきた。マリアンヌは少し涙ぐみました。
「家族でスコットランドに引っ越すことにしたのです。その方が、私たちにとって、色々とよいことになるでしょうから。」コスナー氏の方を見ると、彼は悲しみと怒りと困惑がごちゃ混ぜになった複雑な顔をしていた。ショックが顔にありありと表れていた。
「それは初耳でした。びっくりしました。いつ頃きまったのですか?」
「少し前ですわ。父がそうしようと提案してきたの。私もここロンドンに留まる理由がないし・・。」マリアンヌはそう言うと、窓の方を見た。
「仕事はどうするのですか?ジョンのことも。」
「それはロンドンにいられる間は続けさせていただくわ。でも、スコットランドに行ったら、もう見られることはできないでしょうね。」マリアンヌは残念そうな顔をした。ケヴィンは、椅子の方に戻ってきて座った。そして、手を組んでそこで1分ほど下を向いて黙って座っていた。それから、顔を上げていった。「私たちのことはどうなるのですか?」マリアンヌはそれを聞いて戸惑った。
「まあ、それは分かりませんわ。私たちの関係ってよく分かりません。私たちって恋人同士なのかしら?」ケヴィンはマリアンヌをジーっと見て言った。
「私は恋人だと思っていた。」マリアンヌは驚いた。「まあ、そうだったの。私は、そこらへんがよく分からなかったの。あなたは、会ったばかりだし、あなたが直接そう言ってくれたわけでもなかったし。」マリアンヌは少し批判がましく言った。
「確かに私たちは会ったばかりだが、普通の友人ではない。親密な関係を築いているものと思っていた。」
「ええ、そうですわ。でも、ごめんなさい。言っていいかしら・・?あなたは結婚する気がなさそうでしたわ。」コスナー氏は、黙りこくっているようだった。それから少しして話し出した。
「ああ、確かに私は結婚しない主義だ。結婚はしない。これからもね。ありがたいことに、私は爵位を持ってないから、結婚して子供を作らなければならない理由もないしね。私は、子供の頃、絶対に結婚しないでおこうと決めたんだ。愛のない結婚や形だけの結婚をして、夫婦仲が冷え切った人たちを何組も見てきたしね。」コスナー氏の口調には、個人的な怒りも入っているような強い感じでした。マリアンヌはコスナー氏がいつもと違う雰囲気を出したのに、少し怯えた。
「そうですの。では、私たちがこのまま一緒にいても結婚になりませんね。」
「ああ、ならない。私は結婚しない主義だ。」マリアンヌはそれを聞いて、目に涙がジワっとうかんでくるのを感じた。何で悲しくなるの?私、この人と結婚したかったの?
それにしても、あんまりにもきつくて残酷な言い方だわ。まるで、私が結婚する価値がないみたい。
マリアンヌはハンドバッグからハンカチを取り出し、涙をふきました。
「そうですか。では、私たちが付き合っていても何の意味もございませんね。私は、結婚したかったし、いずれそうするつもりです。あなたのことは好きで好意を抱いていましたわ。でも、ごめんなさい。あなたとは、付き合えませんわ。時間の無駄です。」そう言うと、マリアンヌは立ち上がり、お辞儀もせず、扉の方へ駆け足で去って行った。

