振り向いたらあなたが~マクレーン家の結婚~

マリアンヌは公園でその少年と会うことになりました。
コスナー氏がジョンを連れて、公園の入り口から現れました。ジョンは、頭の後ろに腕を組んで、口に藁を加えて、ツンとした顔していました。
コスナー氏は、マリアンヌの所まで来ると、ジョンを後ろから押して前に来させました。
「ほら、ジョン。謝りな。」
ジョンはマリアンヌの方を見ず、斜め上を見ていましたが、やがて観念したのか「すみませんでした。」と言って、頭を下げた。マリアンヌはにっこり微笑み、「いいのよ、謝ってくれれば。盗みはいけないことだって、わかっているだろうし。」
「実は、あなたに提案したいことがあるの。」
「何だよ?!」
「あなたは、学校に行ったことがある?」
「まさか。ないに決まっているだろう。」
「そうよね、実は私がしようと思う提案は、あなたに少し勉強を教えてあげようかと思うの。」マリアンヌがこういうと、少年は驚いて、
「何だって!!?勉強する?そんなの絶対嫌だ。」と叫びました。
「あら、一度やってみたら楽しいかもしれないわ。学ぶことが好きは人もいるもの、私とか。それに、文字が書けたり、計算ができるようになると、あなたの人生が変わるわよ。」少年はマリアンヌを何か変わった生き物であるかのよう見つめました。
「何だって、あんたがこんなことをする必要があるのですか?貴婦人は、きれいに着飾っていればいいじゃないか。」
マリアンヌはフフっと笑い、「何故かというと、私は教えることが好きだからよ。それに教える経験をもっと積みたいしね。私は家庭教師をしているのだけど、いまいち自分に自信が持てないの。だからもっと教える機会がほしいのよ。」
ジョンは、マリアンヌを見て、またチラッとケヴィンの方を見ました。今まで、二人のやりとりを黙って見ていたケヴィンでしたが、ジョンが助け舟を求めているようなので、ジョンの方を見てこう言いました。
「ジョン、いいアイディアじゃないか。お前にタダで授業してくれるとさ。こんなこと中々ないよ。一度受けてみたらどうだ。」ジョンはまだ心が決まってない様子だったので、「ジョン。この人は、君の助けをほしいだけだよ。協力してあげたらどうかね。ま、この人から数学は教えてもらうべきでないかもね。ひどく苦手なのでね。」そう言うと、マリアンヌにウィンクしました。
マリアンヌは、「まあ、ひどいわ。どもその通りよ。ねっ、助けてくれない?お願い。」ジョンは、二人をきょろきょろと見つめ、どうしたものかと頭をポリポリかき、「うーん、やってあげてもいいよ。」と照れ臭そうに言いました。マリアンヌは、「ありがとう」と言って、少年の方へ手を差し出しました。少年はモジモジとしてから、マリアンヌの手を握り返しました。
「これで決まりね。では来週から会いましょう。場所は私の家に来てくれる?」そう言うと、どこの家か説明を始めました。
少年は二人にぺこりとお辞儀し、公園の出口へと去って行きました。マリアンヌは少年の姿が見えなくなるまで手を振っていました。コスナー氏は、「二つも仕事を抱えたら、大変だよ。これから忙しくなってしまうよ。大丈夫か?」「きっと大丈夫だわ。いい経験になりそうな気がするの。でも、あんまり会えなくなるかもしれないわ。」そう言うと、がっかりした顔を見せました。
ケヴィンはマリアンヌを自分の方へ向かせ、あごの下に指を置くと、上へ向かせました。
そしてそこに素早く口づけし、「それは残念だな。それならこれからは、数学の事を教えてもらう以外でも家に来たらいいよ。」と言いました。
マリアンヌは赤面し、「まあ違うわ。もちろん、数学のためにしか行かないわ。」と怒りながら言いました。コスナー氏は、マリアンヌをだきよせ、クックッと笑いながら、「じゃあ、数学のために来てくれ。」と言い、マリアンヌに再び覆いかぶさるように口づけしました。二人は抱き合ってそこで長いこと佇んでいました。