振り向いたらあなたが~マクレーン家の結婚~

それからというもの、マリアンヌは週に一度コスナー氏の屋敷に通うことになった。
マリアンヌは、数学のわからないところを教えてもらいに行ったが、ほとんどの時間は楽しくお喋りしていた。二人の会話はとても相性が合っていて、いつも面白く、ゲラゲラと笑い声が室外へも漏れてくるほどでした。コスナー氏の執事は、「これは何事なのか?!」と呟きました。
コスナー氏は、男やもめの一人暮らしなので、この邸宅にはほとんど話声がなく、いつも決まって静かだったからです。それにマリアンヌが来てから、コスナー氏の様子は、ガラリと変わりました。いつもしかめっ面をして、仕事から疲れて帰ってきていたのに、今ではいつも微笑んでいて、スキップできそうなぐらい上機嫌でした。
マリアンヌが来る日、朝からソワソワして落ち着かなく、服に皺が寄ってないか念入りにチェックしたり、軽食の指示を執事に出したりしていました。
あくる日、いつものようにマリアンヌがコスナー氏の客間へやってきました。
マリアンヌがいつも通り、数学の難しい問題について尋ねました。マリアンヌが顔を上げると、向こうの机にマリアンヌの盗まれたバックがありました。びっくり仰天して、マリアンヌは立ち上がり、ハンドバッグの所へ行きました。それは紛れもなくマリアンヌのものでした。
ボロボロになっていましたが、間違えようにありません。マリアンヌは、急いでコスナー氏の方へ振り向き、「すみません、急に立ち上がって。でも、このバック私のものなんです。」と言いました。コスナー氏は、驚いて、「えっ!?それは、僕の親しい子から貰ったものだよ。」
ケヴィンは、やっぱりあのバックはジョンが盗んだものであることを確信しました。マリアンヌは、コスナー氏の所に来ると、「ああー、残念。こんなことになった。とても気に入っていたのに。でも見つかってよかったわ。使い物にはならなさそうだけど。」とがっかりした顔を浮かべました。
コスナー氏は、「それは君に返すよ。」と言い、ジョンのことを思いました。さすがに盗みはよくないだろう、ジョン。いくら生活が厳しくても。次に会った時は、何か言うべきだろうか。
隣でマリアンヌが、「これを盗んだ子の顔を覚えているわ。きっと生活が大変なのよね。盗みは悪いことだけど、彼の場合、よく分からないわ。」それから少し考え込んでから、「ミスター・コスナー。そう言えば、先ほど、あなたはこのバックを盗んだ子と知り合いといったわよね。」
「ああ。」
「もしよろしければ、私をその子と会わせてほしいの。
「え?なんだって。いや、あんまりよくないよ。」
「あいつは、あまり綺麗な所に住んでいないし、婦人が行くような場所でない。」
「別に、そこでなくても構わないわ。私、一度彼に会ってみたいわ。」コスナー氏は、黙り込んで、「うーん、・・・・、まあ、うまくいけば会せるよ。まさか、怒ったりするために?」
「違うわよ。そうじゃないの。一度話してみたいだけよ。」そう言うと、ニコっと笑って、マリアンヌは椅子に座った。まるでいい事思いついたというような表情をしていました。