ヒロタにはお気に入りの椅子がある。
その椅子はとても立派な椅子でとても座り心地が良いらしい。
ヒロタには大切にしている手紙がある。
その手紙は上質な紙に貴行そうな文字が並んでいる。
ヒロタには特別なリボンがある。
そのリボンは手触りが良くて気持ち悪いくらい真っ赤な色をしている。
私は椅子には座ったことがない。
私は手紙の文字が読めない。
私はヒロタと違う生き物なのかもしれない。
でもヒロタは特別なリボンを私の首につけたのだ。
気遣わし気に眉を寄せて優しい手つきで私の首にそのリボンを結ぶのだ。
そのリボンはとても長かった。
お気に入りの椅子と繋がっていた。
ヒロタは大切にしている手紙を引き出しから抜き出してポケットにしまった。
「しばらく 留守にするね。」
ヒロタは一週間帰って来なかった。

