先輩がそう言ったとき、丁度ウェイトレスが料理を運んできた。
やっぱり、先輩の態度に引っ掛かるものを感じるけれど、とりあえず黙ってごはんを食べ始める 。
食事の間はほぼ、無言だった。
私は、元から余り食事中におしゃべりする方ではないけれど。
もう少しで食べ終わると言うとき、ふと先輩が手を止めて言った。
「水野、泣いてたよね。」
油断してたところに爆弾を落とされて思わずフォークを落としそうになった。
「見てたんですか?気づいてないと思ってたのに。」
見られてたなんて、恥ずかしすぎる 。
絶望
「最後の山場のシーンで。何となく水野を見たら、驚いたよ。泣いてたから。」
「何で見ちゃうんですか。というか、先輩は泣かなかったんですか?」
「泣きそうになったよ。余りに綺麗で。」
“どのシーンが?”そう聞こうとした言葉は言わずに終わった。
「涙を拭うこともせずに、まっすぐスクリーンを吸い込まれるように見てて。」
「先輩!」
思わず、声をあげて抗議する。
また、からかわれた。
“余りに綺麗で”そう言ったときの先輩の優しい瞳が頭に浮かぶ。
そんな訳、ないのに。
「からかわないで下さい。」
私は、それだけ言うと急いで残りのごはんをひたすら食べた。
“本当、なのにな。”
先輩の独り言のような呟きには、気づかない振りをした。

