「…ちょっと出てくる」
「えっ?」
「もう消灯だよ?」
「大丈夫。消灯までには戻るから、心配せんでええよ」

二人の顔も見ずに、私は部屋を出た。そしてあてもなく歩き、気がつけば屋上に来ていた。

「…」

今日の夜空は曇りなのか、星は一切見えなかった。

「…」

もちろん周囲にはビルの明かりが煌々とついていたが、私にはそれを、明かりとして見るだけの余裕がなかった。

「…」

私は、二人の関係を、大きく歪めてしまった。二人は親友同士であり、たった一人の姉妹であったはずなのに、そこに恋敵なんていう余計な関係を、一つ植え付けてしまった。

もちろん、私が言わなくても、二人はいつか現実を知ることになっただろう。でもそれはきっと、自分自身での発見のはず。そうなれば、多少なりとも飲み込めるというわけだ。

でも、今回は事情が違う。現実を教えてしまったのは、私だ。

「…」

本当は、もっといい責任の取り方があるのかもしれない。それこそあの時みたいに、素直に謝れば済む話なのかもしれない。だけど、謝って済むような問題なら、二人の目の恋敵成分は、もっと薄かったはずだ。

私にも見えるくらいその濃度が濃かったということは…事態はそれだけ深刻だということだ。

「…堪忍な…」

誰に謝ったのかも分からないまま、私は屋上の淵に両足を乗せていた。本来は屋上に上がることは禁止されているため、屋上の安全管理は特にしていないらしい。

「…」

私は自らを宙に投げた…はずだった。