私の頭に、先生の手が載せられる。そして優しく、撫でられる。

「何より素敵な経験ができた。でも、これはあくまで表紙。これから先のページは、僕達で書いていこう」
「はいっ!」
「僕から、詩音から。そして、未来の僕と、未来の詩音から。二人じゃなくて、四人のために。僕達が合わさって、僕達が交わって。『Four you ~2+2=4=2×2~』」

あの小説が予言の書のようになっていた理由が、やっと分かった気がした。そして、手塚姉妹が興味を持ってくれた理由も。

あれは、私の物語だったんだ。モチーフなんてもんじゃない。私が、私のことを書いた物語。それが、アレだったのだ。

空はまだ茜色で、校舎によって一部が四角く切り取られていた。その風景を写し取り、切り取られた所に、想像と思いをこめたフィクションをあてはめていく。それが、私の仕事。

今日は丁度満月だったらしく、西の大きな太陽と、東の円い月がにらめっこしていた。もうしばらくすれば、空は月のステージとなる。そうすれば星が輝きだし、夜という静かな時間に彩りをもたらす。そしてまたも私はその風景を写し取り、建物の明かりで見えなくなっている星の代わりに、理想と願いを込めたフィクションを散りばめていく。

私一人で物語を紡ぐ時代は、もうとっくの昔に終わっていた。孤独だったあの時。初めて「友達」を見つけた入学初日から、傍には誰かがいてくれた。

そして、今隣にいるのは、これから先も多分ずっと、一緒にいてくれる人…。