「家政婦さん!?」

呼びかけにも返事せずにその場に横たわる家政婦。そしてその直後、耀兵のスマホが震えた。

「…陽未からだ…しかも、テレビ電話…」

応答キーに触れる指がわななく。

「…陽未…?」
「お兄ちゃん、見えてる?」
「ああ。見えてるし、聞こえてる。…一体何のつも」
「じゃあ、この映像をそこにいるカメラマンさんのカメラに繋げて。それで、この映像を今すぐに全国に流してほしいの」

陽未が耀兵の言葉を遮る。滅多にないことに驚きを隠せない耀兵に、陽未は続ける。

「早く!」
「…分かった…カメラマンさん、ちょっといいですか…?」
「は、はい…」
「父さん、テレビつけて」
「ああ…」

テレビには、耀兵のスマホの画面と同じ映像が映し出されていた。

「…テレビをご覧の皆さん、驚かせてしまって申し訳ありません」

電話からの声とテレビからの声が重なりあい、どこか人間の声でないような雰囲気を醸し出す。

「たった今、Nホームサービスさんが提供している全ホログラム家政婦の機能を停止させました」
「なっ…何考えてるんだ、陽未!」
「落ち着いて、父さん」

この場にもし生身の陽未がいたら、飛びかかってしまいそうだった。

「…先ほどの声は父の声です」

電話に入る音も、テレビの音として聞こえるようだった。