再び場面は、枡鳥家に戻る。

「ただいま~」

耀兵が帰宅すると、「おかえり」の一言も言わず、慎太が駆け寄る。

「耀兵、陽未を見なかったか!?」
「陽未? …そういえば見てないけど…何?」
「Nホームサービスに向かったまま帰ってこないんです」
「…どなたですか?」

帰ってきて早々に訳の分からないことを言われ眉をひそめる耀兵に、松水がお辞儀する。カメラマンも後に続く。

「初めまして、帝都放送アナウンス部の松水と申します」
「帝都放送? …あ~、テレビの取材ですか?」
「はい。ホログラムの家政婦さんに来ていただいているご家庭に密着取材するという企画だったのですが…」
「それどころではなくなってしまったんです。…殴り込みに行くなんて…」

慎太は一人、冷や汗をかきながら場を和ませようと努力する。

「で、でも、さっきの映像はネットにアップしてるわけじゃないんですよね?」
「はい。ネットにアップしていない以上、話があると陽未さんが言ったこともNホームサービスには知られていないはずです。なので大丈夫だとは思うんですけど…」
「大丈夫ではないかもしれません」

家政婦の一言が、再び息を詰まらせる。

「私達の行動は、Nホームサービスによって管理されているんです。なので、先ほどの一部始終も、見られている可能性が高いかと」
「なっ…だったらどうしてあの時すぐに言ってくれなかったんですか、家政婦さん!」

慎太が家政婦の方を揺さぶる。

「すみません、会社のことは緊急時以外に話してはならないということになっているので…」
「じゃあ、今は緊急事態ってことか…」

耀兵の顔にも焦燥の色が見え始める。

「はい。…なので…あ…れ…?」
「家政婦さん?」

いきなり、家政婦がその場に倒れ込んだ。